特定遊興飲食店営業の定義の解釈案「パブリックコメント」より

1.総説

深夜は、その他の時間帯と比較すると、一般に、多くの人々が睡眠を取っていることから人目も少なくなり、規範の逸脱に対する社会の制御機能が低下する時間帯と考えられる。また、深夜は、日中の勤務時の緊張から解放され、長時間にわたって慰安を求め続ける者が多くなる時間帯であり、こうした者が風俗上の規範を逸脱するおそれもある。このような時間帯である深夜に、飲酒をする客に対し、営業者側が積極的に働き掛けて遊興をさせた場合には、遊興に伴う騒音、営業所の周辺での酔客の粗暴・卑わいな行為、痴漢や売春といった性的な事案等を始めとする風俗上の問題が生じるおそれが高いと考えられる。このため、飲食店営業における深夜の遊興に対する規制を緩和するに際し、深夜・遊興・飲酒という3要素の全てを満たす営業を特定遊興飲食店営業とし、所要の規制を行うこととしている。

特定遊興飲食店営業とは、ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(客に酒類を提供して営むものに限る。)で、午前6時以後翌日午前0時前の時間においてのみ営むもの以外のもの(風俗営業に該当するものを除く。)をいう(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律(平成27年法律第45号)による改正後の風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「法」という。)第2条第11項)。したがって、例えば、以下のものは特定遊興飲食店営業には該当しない。


○ 低照度飲食店営業に該当するもの

○ 深夜は営業しないもの

○ 深夜は酒類を提供しないもの

○ 深夜は客に遊興をさせないもの

2.「遊興をさせる」の意義

(1) 「遊興をさせる」とは、文字どおり遊び興じさせることであるが、特定遊興飲食店営業として規制対象となるのは、営業者側の積極的な行為によって客に遊び興じさせる場合である。客に遊興をさせるためのサービスとしては、主として、ショーや演奏の類を客に見聴きさせる鑑賞型のサービスと、客に遊戯、ゲーム等を行わせる参加型のサービスが考えられる。


ア 鑑賞型のサービスについては、ショー等を鑑賞するよう客に勧める行為、実演者が客の反応に対応し得る状態で演奏・演技を行う行為等は、積極的な行為に当たる。これに対して、単にテレビの映像や録音された音楽を流すような場合は、積極的な行為には当たらない。

イ 参加型のサービスについては、遊戯等を行うよう客に勧める行為、遊戯等を盛り上げるための言動や演出を行う行為等は、積極的な行為に当たる。これに対して、客が自ら遊戯を希望した場合に限ってこれを行わせるとともに、客の遊戯に対して営業者側が何らの反応も行わないような場合は、積極的な行為には当たらない。


(2) 具体的には、例えば、次に掲げる行為が「客に遊興をさせる」ことに当たる。

① 不特定の客にショー、ダンス、演芸その他の興行等を見せる行為

② 不特定の客に歌手がその場で歌う歌、バンドの生演奏等を聴かせる行為

③ 客にダンスをさせる場所を設けるとともに、音楽や照明の演出等を行い、不特定の客にダンスをさせる行為

④ のど自慢大会等の遊戯、ゲーム、競技等に不特定の客を参加させる行為

⑤ カラオケ装置を設けるとともに、不特定の客に歌うことを勧奨し、不特定の客の歌に合わせて照明の演出、合いの手等を行い、又は不特定の客の歌を褒めはやす行為

⑥ バー等でスポーツ等の映像を不特定の客に見せるとともに、客に呼び掛けて応援等に参加させる行為


(3) これに対して、例えば、次に掲げる行為で上記(2)の行為に該当しないものは、「客に遊興をさせる」ことには当たらない。

① いわゆるカラオケボックスで不特定の客にカラオケ装置を使用させる行為

② カラオケ装置を設けるとともに、不特定の客が自分から歌うことを要望した場合に、マイクや歌詞カードを手渡し、又はカラオケ装置を作動させる行為

③ ボーリングビリヤードの設備を設けてこれを不特定の客に自由に使用させる行為

④ バー等でスポーツ等の映像を単に不特定の客に見せる行為(客自身が応援等を行う場合を含む。)

3.営業の意義

(1) 営業とは、財産上の利益を得る目的をもって、同種の行為を反復継続して行うことを指す。営業としての継続性及び営利性がない場合は、深夜において人に遊興と飲食をさせたとしても、特定遊興飲食店営業には該当しない。


(2) 例えば、次のようなものは一般には営利性がなく、営業には当たらない。

○ 日本に所在する外国の大使館が主催する社交パーティー

○ 結婚式の二次会として、新郎・新婦の友人が飲食店営業の営業所を借りて主催する祝賀パーティー(飲食店営業の営業者が当該パーティーの主催者に対して営業所を有償で貸す行為には営利性が認められる。営業者が、深夜に及ぶパーティーのために営業所を有償で貸し、深夜において、酒類を提供するとともに、パーティーの余興に合わせて照明や音響の調整を行うという行為を反復継続しようとする場合は、主催者は特定遊興飲食店営業の許可を受ける必要はないが、当該営業者は当該許可を受ける必要がある。)


(3) 例えば、スポーツ等の映像を不特定の客に見せる深夜酒類提供飲食店営業のバー等において、平素は客に遊興をさせていないものの、特に人々の関心の高い試合等が行われるときに、反復継続の意思を持たずにたまさか短時間に限って深夜に客に遊興をさせたような場合は、特定遊興飲食店営業としての継続性は認められない。


(4) 短期間の催しについては、2晩以上にわたって行われるものは、継続性が認められる。これに対し、繰り返し開催される催し(1回につき1晩のみ開催されるものに限る。)については、法第8条第3号の規定の趣旨に鑑み、引き続き6月以上開催されない場合は、継続性が認められず、営業には当たらない。

4.「設備を設ける」の意義

(1) 「設備を設けて」とは、客に遊興と飲食をさせる営業を営むに足りると客観的に認められる物的施設及び備品を設けていることを指す。


(2) 客に遊興をさせる設備がなく飲食をさせる設備のみがある客室甲室を設けている飲食店営業と、客に飲食をさせる設備がなく遊興をさせる設備のみがある客室乙室を設けている興行場営業が同一の施設内で営まれている場合、例えば次のいずれかに該当するようなときは、これらの営業は一体のものと解され、一般には設備を設けて客に遊興と飲食をさせていることになる。


① 甲室と乙室の料金一括して営業者に支払うこととされている場合(食券付きの入場券を販売する場合や、入場料を支払えば飲食物の一部又は全部が無料になる場合等を含む。)

客が甲室で飲食料金の精算をせずに乙室に移動できる場合

客が乙室で遊興料金の精算をせずに甲室に移動できる場合

④ 乙室にテーブルがあり、客が甲室で提供を受けた飲食物を乙室に持ち込める場合

⑤ 乙室にテーブルがあり、乙室にいる客に対して、甲室から飲食物を運搬して提供する場合

⑥ 甲室にいる客が乙室でのショー、音楽等を鑑賞できる場合


(3) 上記(2)④に該当する場合であっても、例えば映画館、寄席、歌舞伎やクラシック音楽のための劇場等のように、専ら、興行を鑑賞させる目的で客から入場料を徴収することにより営まれる興行場営業であって、興行の鑑賞のための席において客の大半に常態として飲食をさせることを想定していないものについては、当該席が設けられている客室は飲食店営業の営業所とはされていないことが一般的である。その場合、客が席に飲食物を持ち込んで飲食をしたとしても、その席は、一般には飲食をさせる設備には当たらない(なお、単に映画を見せる行為は、「遊興をさせること」に当たらない。)


(4) 例えば短期間の催しで、客にショー、音楽等を鑑賞させる場所と客に飲食をさせる場所を明確に区分しているような場合は、一般には、設備を設けて客に遊興と飲食をさせていることには当たらない。

特定遊興飲食店営業に関する規定「パブリックコメント」より

※1.特定遊興飲食店営業に関する規定(政令)

(1) 特定遊興飲食店営業の許可に係る営業所設置許容地域の指定に関する条例の基準を以下のとおり定める。


 営業所設置許容地域の指定は、次のいずれにも該当する地域内の地域について行うこととする。


(ア)  次のいずれかに該当する地域であること。


(a)  店舗が多数集合しており、かつ、風俗営業、遊興飲食店営業(設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(客に酒類を提供して営むものに限る。)をいい、風俗営業に該当するものを除く。)並びに深夜において営まれる酒類提供飲食店営業及び興行場営業の営業所が1平方キ

ロメートルにつきおおむね300箇所以上の割合で設置されている地域(以下「風俗営業等密集地域」という。)

(b)  その他の地域のうち、深夜において1平方キロメートルにつきおおむね100人以下の割合で人が居住する地域


(イ)  次に掲げる地域でないこと


(a)  住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域(以下「住居集合地域」という。)

(b)  住居集合地域以外の地域のうち、住居の用に併せて商業又は工業の用に供されている地域で、住居が相当数集合しているため、深夜における当該地域の風俗環境の保全につき特に配慮を必要とするもの

(c)  (a)又は(b)に掲げる地域に隣接する地域(風俗営業等密集地域内の地域であって、幹線道路の各側端から外側おおむね50メートルを限度とする区域内の地域を除く。)

(d)  その他の地域のうち、保全対象施設(特にその周辺の深夜における良好な風俗環境を保全する必要がある施設として都道府県の条例で定めるものに限る。)の周辺の地域(当該保全対象施設の敷地の周囲おおむね100メートルを限度とする区域内の地域に限る。)


 営業所設置許容地域の指定及びその変更は、地域の特性その他の事情に応じて良好な風俗環境の保全に障害を及ぼすこととならないよう配慮するとともに、当該地域における法第44条第1項の規定による特定遊興飲食店営業者の団体の届出の有無及び当該団体が関係特定遊興飲食店営業者に対して行う法又は法に基づく命令若しくは条例の規定の遵守のための自主的な活動にも配意することとする。

 

(2) 特定遊興飲食店営業の営業所が滅失した際の許可の特例が適用される滅失事由として、暴風、豪雨その他の異常な自然現象により生ずる被害等を定める。

 

(3) 特定遊興飲食店営業の営業時間の制限に関する条例の基準を以下のとおり定める。

 営業時間の制限は、深夜において営業を営んではならない時間として午前5時から午前6時までの時間内の時間を指定し、又は深夜から引き続き営業を営んではならない時間として午前6時後午前10時までの時間内の時間を指定して行うこととする。

 営業時間を制限する地域の指定は、居住、勤務その他日常生活又は社会生活の平穏が害されることを防止するため早朝における風俗環境の保全につき特に配慮を必要とする地域内の地域について行うこととする。

 

(4) 特定遊興飲食店営業に係る騒音及び振動の規制に関する条例の基準を以下のとおり定める。

ア深夜における営業に係る騒音に係る数値は、以下の数値を超えない範囲内において定めるものとする。

(ア)  住居集合地域その他の地域で、良好な風俗環境を保全するため、特に静穏を保持する必要があるものとして都道府県の条例で定める地域については、45デシベル

(イ)  商店の集合している地域その他の地域で、当該地域における風俗環境を悪化させないため、著しい騒音の発生を防止する必要があるものとして都道府県の条例で定める地域については、55デシベル

(ウ)  その他の地域については、50デシベル

イ深夜における営業に係る振動に係る数値は、55デシベルを超えない範囲内において定めるものとする。

2.風俗営業に関する規定

住居集合地域等に隣接する地域のうち、風俗営業等密集地域内の地域であって、幹線道路の各側端から外側おおむね50メートルを限度とする区域内の地域については、営業延長許容地域として指定することができることとする。

3.手数料

特定遊興飲食店営業の許可申請等に係る手数料(24,000円 ※複数申請の場合は割安に)として条例で定める金額の標準を定める。

※4.改正案の概要(府令)

(1) 改正法の施行に伴い、特定遊興飲食店営業の許可制度が新設されることを踏まえ、特定遊興飲食店営業の許可申請書の添付書類(風俗営業と同様のもの)を定める。


(2) 特定遊興飲食店営業の営業所の構造又は設備の変更のうち、都道府県公安委員会による事前承認の対象ではなく事後届出の対象となる軽微な変更として、次に掲げる変更以外の変更を定める。

 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第14号に規定する大規模の修繕又は同条第15号に規定する大規模の模様替に該当する変更

 客室の位置、数又は床面積の変更

 壁、ふすまその他営業所の内部を仕切るための設備の変更

 営業の方法の変更に係る構造又は設備の変更


(3) 特定遊興飲食店営業者の団体が国家公安委員会又は都道府県公安委員会に届出をを行う際の届出事項を定める。

※5.改正案の概要(規則)

(1) 低照度飲食店営業及び特定遊興飲食店営業に係る照度の測定方法を以下のとおり定める。


 客席以外の客室の部分において客に遊興をさせる態様の営業に係る客室であって客に遊興をさせるための部分を有するもののうち、当該客室内の客席の面積の合計が当該客室の面積の5分の1以下であるものについては、客席及び客に遊興をさせるための客室の部分の双方において照度を測定し、そのいずれかにおい照度が10ルクス以下である場合は低照度飲食店営業に当たるものとする。

 低照度飲食店営業及び特定遊興飲食店営業の照度規制に係る照度の測定場所は、

客席のみとする。


(2) 風俗営業者又は特定遊興飲食店営業者が深夜においてその営業を営む場合において、深夜における客の迷惑行為を防止するために深夜において講じなければならない措置の具体的内容として、以下のものを定める。


 営業所の周辺において他人に迷惑を及ぼしてはならない旨を表示した書面を営業所の見やすい場所に掲示し、又は当該書面を客に交付すること。

 営業所の周辺において他人に迷惑を及ぼしてはならない旨を客に対して口頭で説明し、又は音声により知らせること。

 泥酔した客に対して酒類を提供しないこと。

 営業所内及び営業所の周辺を定期的に巡視し、営業所の周辺において他人に迷惑を及ぼす行為を行い、又は行うおそれのある客の有無を確認すること。

 エに規定する客がいる場合には、当該客に対し、エに規定する行為をとりやめ、又はこれを行わないよう求めること。


上記アからオまでに掲げるもののほか、風俗営業者又は特定遊興飲食店営業者は、客の迷惑行為を防止するための措置が適切に講じられるようにするため、当該措置について、従業員に対する教育を行い、又は営業所の管理者に当該教育を行わせなければならないものとする。


(3) 風俗営業者又は特定遊興飲食店営業者が深夜においてその営業を営む場合において営業所に備え付ける苦情の処理に関する帳簿の記載事項として、以下のものを定めるほか、当該帳簿は最終の記載をした日から3年間保存しなければならないこととする。


 苦情を申し出た者の氏名及び連絡先(氏名又は連絡先が明らかでない場合は、その旨)並びに苦情の内容

 原因究明の結果

 苦情に対する弁明の内容

 改善措置

 苦情処理を担当した者


(4) 風俗営業の営業所の管理者の業務として、以下のものを追加するとともに、特定遊興飲食店営業の営業所の管理者の業務として風俗営業の営業所の管理者の業務と同じものを定める。


 深夜に営業を営むときは、苦情の処理に関する帳簿及びその記載について管理すること

 客が大声若しくは騒音を発し、又は酒に酔って粗野若しくは乱暴な言動をすることその他営業所の周辺において他人に迷惑を及ぼすことがないようにするために必要な措置が適切になされるよう必要な措置を講ずること

 風俗環境保全協議会における構成員となった場合に、当該協議会の活動に参画すること


(5) 特定遊興飲食店営業の営業所の構造及び設備の技術上の基準として、以下のもの

を定める。

 客室の床面積は、一室の床面積を33平方メートル以上とすること。

 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。

 善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し、又は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。

 客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りでない。

 営業所内の照度が十ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。

 騒音又は振動の数値が条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。


(6) 特定遊興飲食店営業の地域制限の例外となるホテル等内適合営業所の基準として、以下のものを定める。


 営業所が設けられる階の当該営業所以外の部分並びに当該階の直上階(当該営業所が最上階に設けられる場合は屋上)の当該営業所の直上の部分及び直下階の当該営業所の直下の部分をホテル営業若しくは旅館営業を営む者(以下「ホテル等営業者」という。)又は風俗営業者、特定遊興飲食店営業者若しくは深夜において酒類提供飲食店営業若しくは興行場営業を営む者が管理すること

 バルコニーを設置する場合にあっては、バルコニーに通じる出入口に二重扉を設けること

 非常の場合を除き、営業所が設けられる施設のうちホテル等営業者が管理する部分を通じてのみ客が営業所に出入りできるような構造であること

 営業所への客の出入りをホテル等営業者が適切に管理することが見込まれること

 営業所が設けられるホテル営業又は旅館営業に係る施設がラブホテル営業の用に供されるものではないことを定める。


(7) 風俗環境保全協議会の委員は、都道府県公安委員会が委嘱することとする。